大判例

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高松高等裁判所 昭和43年(ネ)6号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕ところで前記認定の事実によれば、控訴人は被控訴人の所為が就業規則所定の懲戒事由に該当し懲戒解雇に処するを相当と考えながら、これを普通解雇としたものであるところ、一般に就業規則所定の懲戒事由が存する場合、形式上懲戒処分たる懲戒解雇に処することなく普通解雇に処することは、その実質が懲戒処分であつたとしても、必ずしも許されないものではない。けだし、客観的に懲戒解雇を相当とする場合、これを普通解雇に処することは、特段の事由がない限り当該労働者にとつて利益にこそなれ不利益をもたらすものではないからである。しかし、一般に就業規則に軽重数段階の懲戒処分の種類が定められている場合において、そのいずれを選択すべきかについては一応使用者の自由な裁量に委されてはいるものの、その恣意的な選択が許されないのと同様に、使用者が実質的には懲戒の趣旨を以て労働者を普通解雇に処する場合においても、それが社会通念上是認し得ない程度に客観的合理性を欠く場合には解雇権の濫用として許されないものと言わねばならない。そして、具体的に如何なる場合に右の解雇権の濫用に当るかは、個別的事案につき、当該解雇の動機、目的、被解雇者の行為、情状を綜合して判断すべきであるが、解雇(懲戒解雇及び懲戒の目的を以てする普通解雇)が労働者にとつて最も重大な制裁であることを考えると、その行使は極めて慎重であるべきであり、当該労働者を是非とも企業外に放逐しなければ到底企業秩序を維持し得ない場合には格別、具体的事情を綜合勘案しても右の程度に至らないような場合には、特段の事由がない限り解雇は客観的合理性を欠くものと言わざるを得ない。

四、そこで本件の場合解雇権の濫用に当るか否かについて判断するに、前記認定の事実によれば、本件第一、第二事故は番組の定時放送を使命とする控訴人にとつて重大な事故であり、またその職責上定時勤務を厳格に要求されるアナウンサーとして被控訴人の所為は著しく責任感に欠けるものであり、特に二週間内に二度も同様の事故を起し、また第二事故については直ちに事故報告書を提出せず、その後提出した報告書には一部事実を歪曲して記載し、責任を他に転嫁する様な態度がみられたこと等を考慮すると、控訴人が被控訴人を解雇に価すると判断したことは、全く根拠がないものとは言いえない。しかし一方、本件事故はいずれも被控訴人の寝すごしと言う過失行為によつて発生したものであつて被控訴人の悪意ないし故意から出たものではないこと、第一事故については直ちに謝罪していること、第二事故については起床後一刻も早くスタジオ入りをすべく努力をしていた点が認められること、第二事故についても結局は自己の非を認めて謝罪の意を表明していること、第一、第二事故とも寝過しによる放送の空白時間はそれほど長時間とは言えないこと、被控訴人は二五才の前途ある青年であり、今まで懲戒処分を受けたことがなく、平素の勤務成績も別段悪くはないこと、などの諸事情を綜合勘案すると、本件の場合、被控訴人をこの際是非とも企業外に放逐しなければならない客観的必然性は未だ不充分であると言わざるを得ず、結局本件解雇は客観的合理性を欠き解雇権の濫用としてその効力を生じないものと言わなければならない。(合田得太郎 奥村正策 林義一)

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